某所 2008年


いつの間にか、見知らぬ片道切符を握りしめていた。
いつの間にか、一両の列車が待っていた。

心許ない鉄路。その先に続く、灯りなきトンネル。


君に存在価値はあるか?

無い、と答えると、列車は僕を乗せて動き出した。


ゆっくり、ゆっくりと先の見えないトンネルへ。


風を感じない。
淀んでいる。


後ろを振り返る。そこは、光の世界。
戻らなくていいの?もう、二度と光を浴びれないかもよ。

別にいいんだ、これでいいんだ。


カーブを曲がる。
宙に浮いた鉄路。
この世界は、現実も、常識も、通用しない。


もう一度だけ振り返る。
光は、畢った。


しばらく、黙ってる。
喋ることすら今は苦痛なんだ。

















鉄路は突如終わりを告げた。
行き止まりらしい。


人生の行き止まりですか?

そう訊ねると、横を見るように促された。


まだ、行き止まりではないようだ。
更に下へ行けるらしい。鉄路の幇助はないが。




生きることとはなんだろう?




存在価値とはなんだろう?




続けるべきか。終わるべきか。





優柔不断な僕は未だここに立ったままだ。




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