その8

広島県竹原市 2008年4月上旬


坂道をチャリで登り切った所に遺跡があった。
これは北部砲台の一部らしい。


それにしても


こんな楽園にあんな毒ガス工場があったなんて


今のこんな平和なこの島の空気からは、どう考えても信じられなかった。


きっと、この平和のために戦争をしたんだ。

平和のための戦争…

筋道が通ってるように見えて、恐ろしいほどの矛盾に鳥肌が立つ。


人間は何も答えてくれない。
嘘つきだし、欲の塊だから。


きっと今頃も世界の何処かで銃声が鳴り響き、
誰かが血を流しては、それを見て誰かが涙を流している。


戦争をなくしたい。
この島の空気に包まれ、そんなことを強く思った。


でも、きっと残念ながらなくならない。
人間が全滅しないと、戦争は絶対に無くならない。


気付いてはだめなことに気付いてしまった気がした。


こんな平和な景色は戦争のお陰だったということを。


戦争なんか消えればいい。

それなのに、自分たちの周辺の平和が戦争のお陰だった、こんな現実がとてもじゃないけど受けきれなくて。


それでも、この島の確かな平和やまったり感に溶けてしまい、全てはどうでもよくなって、幸せな余韻に変換されてしまった。

単純だ、オレって。


さようなら、大久野島。

多分、大人になったら、また来るよ。


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